行く先々でセイジともえぎは会い、ポケモンバトルが行われた。
会うたびに強くなるもえぎ。変わらない勝ち気な笑顔。
日に日に、もえぎに対するセイジの恋心は強くなっていった。


「ギガドレイン!」
フシギソウがカメールから体力を吸い取る。
「カメたろう!」
もえぎが困惑する。
回復アイテムも無く、戦える手持ちはカメールのみ。
苦手なタイプが相手でも交代ができない。
「とどめだフシギソウ。はっぱカッター!」
フシギバナの放つ鋭い葉がカメールに襲いかかる。が、目の前で攻撃がはじかれた。
「まもる」
攻撃を一切受けない技。守りが固いカメールの得意技だ。でも。
「守っているだけじゃ勝てねーぜ」
カメールを見ていたもえぎが正面を向いた。目に光がある。まだあきらめていないようだ。

セイジは一瞬気を取られた。

「カメたろう、ずつきよ!」
セイジの命令が遅れた隙に、カメールの頭突きがフシギソウに炸裂する。
「フシギソウ!?」
渾身の一撃は、しかしフシギソウを倒すことはできなかった。
「もう一度はっぱカッター!」
「まもる!」
再度守りにはいるカメールだが、うまく決まらなかった。
体制が崩れたカメールにフシギソウのはっぱカッターが当たる。
効果はバツグンだ。
音を立て、バッタリとカメールが倒れた。
「まだまだだな、もえぎ。次も勝ってやるぜ」
しょんぼりしていたもえぎだが、セイジの一言で顔を上げる。
「今度は負けないから!」
いつもの勝ち気な笑顔でもえぎは言い放った。

(だめだ…)
もえぎの笑顔を見るたびに、抑えている感情がわき上がる。
実際、先ほどのセイジは、もえぎに見とれたが為にフシギソウへの指示が遅れた。
ギガドレインで体力を奪っていなければ、カメールの守りが失敗していなければ、セイジは負けていた。
セイジは胸の内のとまどいを隠し、もえぎに言い放つ。
「そ…そう言っていられるのも今のうちだからな」
何とかライバルの顔を作り、その場を立ち去った。


戦っている時の顔が見たい。
ライバルでは我慢できない。

セイジの胸中に渦巻く、相反する思い。
いびつな感情が、いつまでも抑えきれるはずはなかった。


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