白い天井に白いドア。白を基調とした壁には、淡いピンクの花が散りばめられている。
 床は落ち着いたピンクの絨毯、白い丸テーブルとソファ。タンスやクローゼットなどの家具も白く、タンスの上に置かれている様々なぬいぐるみが部屋に彩りを与えている。部屋の端にある大きな白いベッドには、ピンク色の花柄シーツの布団が敷かれている。
 一目でわかる少女趣味の部屋は、天井が高いが窓が無く、どこか閉鎖的な雰囲気を与えている。

 ソファには一人の少女が座っている。
 色白で小柄な、思わず見とれてしまうくらいの美少女。そのまま肖像画が描けるのではないかというくらい、少女と部屋は調和している。淡い色を基調とした部屋の中では非常に目立つ、まっすぐな黒髪は、先がソファに広がっている。
 少女は無表情で、身動きせずに座っている。大きい人形があるのかと思うくらい、気配がない。
 うつむいていた顔を起こす。やはり、からくり人形が動いたような動作。そこか遠くを見ているようなまなざしで、少女がポツリとつぶやく。
「力が、緩んでいる」
鈴を転がしたようなかわいらしい声。だが、その声は緊張している。
 手が胸元に移動する。
「今なら、届くかもしれない」
言って、少女は静かに目を閉じる。祈るような仕草。
 再び少女は、動かなくなった。


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